「米国でキャッシュレスの利用が急伸」FRBの統計で急伸しているのは口座振替と口座振込【日経FinTech】
4月25日の日経FinTechに「米国でキャッシュレスの利用が急伸、FRBが決済に関する調査結果を公表」との記事が出ましたが、同記事情報源のFRB調査結果では利用額が急伸したのは1番が口座振込(ACH credit transfers)、2番が口座振替(ACH debit transfers)です。件数では、1番目にデビットカード、2番目にクレジットカードが、決済件数・伸び率ともに大きいとの内容になっています。FRBの言葉”noncash”には銀行振込や口座振替も含まれており、日本の経済産業省やマスコミが使う言葉「キャッシュレス決済」とは異なるので注意が必要です。
FRB調査結果:Federal Reserve Board – Federal Reserve Payments Study (FRPS)
(日本のキャッシュレス決済には現状、クレジットカード、電子マネー=前払式の非接触IC決済8種、コード決済=16種の合計。なお、経済産業省やキャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ」が他国と比較するキャッシュレス決済比率に掲載されている米国や英国のキャッシュレス決済比率にも銀行振込や口座振替が含まれています。各国で定義や計数が異なる点に注意が必要です。)
日経FinTech記事にある通り、ATMによる現金引き出し件数は減少していますが、情報源のFRBの調査結果では通貨流通相は増えており、現金が減った訳ではないと言えそうです。
FRB調査結果詳細データ:https://www.federalreserve.gov/paymentsystems/coin_data.htm
日経FinTechの記事にも「小切手、カード、ACHといったキャッシュレス決済の支払額は2018年から2021年にかけて急増」と書かれており、タイトルだけ見て日本のキャッシュレス決済と同じ決済サービスが増えていると誤解しないようご注意ください。
なお、FRBの別のデータによると買い物代金の支払方法の割合は、クレジットカードが31%と最も多く、次いでデビットカードが29%、現金が18%、銀行口座決済が13%、モバイル決済が1%、その他9%となっていますが、ここでいうモバイル決済はApple PayやGoogle Payなど非接触IC決済であり、欧米でコード決済はほとんど使われていません。また、$25以下の小額決済領域では、依然、現金決済件数が最も多いようです。(世界決済銀行の統計でも、”Contcatless Payment”はEMVcontacless、すなわちType-A/Bの非接触IC決済を指しており、欧州でも中国やインドからの旅行者用以外にコード決済は殆ど使われていません。)
2023 Findings from the Diary of Consumer Payment Choice:https://www.frbsf.org/cash/publications/fed-notes/2023/may/2023-findings-from-the-diary-of-consumer-payment-choice/